全5回シリーズ「家を買いたい!と思ったら」。初回から読みたい方はこちらから↓
https://fpushi.com/archives/740
今回は「無理なく返していける住宅ローンの限度額」についてお伝えします。シリーズ最終回です。
過度な住宅ローンを組むリスクについては以前、お話しました(まだ読んでいない方は先にこちらを読んでください)↓

今回はそうならないための方法をご説明します。少し長くなりますが、途中で切るとわかりにくいので一気に行きますね。では始めます。
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住宅ローンで大事なのはこの3つです。
- 返済額(毎月とボーナス)
- 期間
- 金利
この3つから借入額が決まります。では順に。
返済額:無理なく返せるのはいくらまで?
目安は返済率25%以内
住宅ローンの年間の返済額は、その人の状況(年齢・家族構成・年収・ライフスタイル)によって違いますが、年収(額面)の25%以内が目安といわれます(これを返済率といいます)。
年収(額面)とは、実際に銀行口座に入金される手取りではなく、税金や社会保険料などを払う前の金額、つまり源泉徴収票のいちばん大きい金額のことです。
例えば、年収(額面)500万円の場合、期間35年・金利4%・返済率25%とすると、借入額の限度は2,350万円以内となります(なぜ4%か?は後ほど)
ご自分の場合を試算したい場合はこちら↓
借入可能額の試算(住宅保証機構株式会社)
https://loan.mamoris.jp/borrowing_income.asp
借入額:2,350万円
期間:35年
金利:4%
→毎月の返済額104,052円(ボーナス払いなしの場合)
これで返済率25%になります。
年収(額面)500万円の方の場合、毎月10.4万円の返済はキツイと感じるかもしれません。
手取りは、税金や社会保険料を20%引かれるとすると(配偶者年収や家族構成によって異なりますが)、400万円ほどでしょうか。
500万円(額面年収)×0.8=400万円(手取り年収)
月収とボーナスの割合にもよりますが、それぞれの手取りは、
- 月収(手取り)28万円
- ボーナス1回(手取り)32万円
といった感じ?
毎月の手取り28万円に対して、住宅ローンの毎月の返済額が10.4万円はキツイですよね(住宅ローンの返済が占める割合は37.1%)
ただ、これは住宅ローンの審査をするときに使う金利4%で計算した場合です。銀行は審査に3~4%の金利を使っているといわれます。将来、金利が上がった場合を想定してのことです。
すぐにこんな金利になるとは思いませんが、住宅ローンは20年、30年と返済が続きます。このくらいで見ておいた方がいいとぼくも考えます。
金利4%だと思って差額を貯金したり、繰り上げ返済したりするといいですね。こうしておけば、もし金利が上がっても対応できます。一石二鳥。
今2020年12月は変動金利が1%を切り、フラット35など全期間固定は1.5%ほど。
例えば、金利1%で計算すると、毎月の返済額は66,337円となります。
毎月の手取り28万円に対して、毎月の返済額が6.6万円なら、住宅ローンの占める割合は23.6%ですから妥当な範囲です。
賃貸マンションの家賃は手取り月収の25%以内。30%を超えるとキツイといわれます。賃貸なら引っ越せば済みますが、住宅ローンはそうはいかないので、このくらいで収めたいところです(そうもいかない事情は次で)
借入額・期間・金利から毎月の返済額・ボーナス返済を計算したい場合はこちら↓
返済額の試算(住宅保証機構株式会社)
https://loan.mamoris.jp/repayment.asp
銀行が貸してくれる額と無理なく返せる額は違う
ここから現実的な話に入ってきます。
こうして計算した住宅ローンの借入額に自分の貯金などを足して家が買えればいいのですが、残念ながら現実にはそうならないことが多々あります。
その結果、目安を超えて住宅ローンを組むことになります。ボーナス払いを組み合わせたりして。
実際、銀行は返済率35%まで貸してくれるところが多いです。これが「銀行が貸してくれる額と無理なく返していける額は違う」ということです。
年収(額面)500万円の場合、期間35年・金利4%とすると、返済率25%では、先ほどの2,350万円、返済率35%では3,290万円となります。この差940万円。
銀行が貸してくれる返済率35%の3,290万円借りた場合、金利1%で毎月の返済額は92,871円です。
先ほどの額面年収500万円の方の手取り月収が28万円とすると、これ、結構キツイと思います。その結果、ボーナス払いを組み合わせることに。
また、変動金利や短期の固定金利で借りている場合、金利が上がったら苦しいのではないでしょうか。
返済期間は何年まで?
返済期間は安易に35年を選ばない
先ほどの計算はすべて期間35年でやっています。
30代前半の方であれば35年で住宅ローンを組んでもいいと思います。
子どもが小学生の時期が貯め時ですので、そこで繰り上げ返済をして退職までに返し終わるように期間を短縮します。
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ただ、特に40代以降の方は注意が必要です。
今は多くの銀行で住宅ローンは審査をパスすれば、80歳まで借りることができます(85歳までという銀行も)。
例えば、45歳の方が期間35年で住宅ローンを組んだ場合、定年退職を60歳とすると、退職前が15年、退職後が20年と定年退職後の期間の方が長いことになります。
これ、現実的でしょうか?
45歳というと子どもの教育費がかかり始めている時期なので、繰り上げ返済はやりにくいと思われます。
退職金を使って一括で返すことが前提なのかもしれませんが、退職金は不透明な時代です。
また、退職金で住宅ローンを返してしまうと、自分たちの老後資金が確保できない可能性も出てきます。
この辺り人生全体を見渡した計画が必要です。毎月の返済額が厳しいからといって、安易に期間を延ばすのはキケンです。
返済期間の目安は65歳まで。長めに組んだ場合、計画的な繰り上げ返済で退職までに返す
定年退職の60歳までとはいいませんが、期間は65歳あたりを目安に検討するのがいいと思います。例えば、40歳の方であれば期間25年です。
定年退職の年齢が延長されるという可能性もありますが、今は会社員の方の場合、50歳過ぎに出向や役職定年(役職が外れた分収入が減る)になって年収が下がることがあります。
60歳で定年となって、その後、同じ会社に再雇用された場合も年収はグンと下がります。
さらに年金は65歳からで、今後、68歳、70歳と遅くなるなんて声もあります。
最初に期間を長めにするのはいいと思いますが、計画的に繰り上げ返済して、退職までに返し終わるようにしたいところです。
金利の選び方
安易に変動金利を選ばない
超低金利が続いているため、変動金利や短期の固定金利を選ぶ方が多いようです。
ぼくは今後の金利上昇リスクを回避する意味で、全期間固定金利がいいと思っています。
住宅ローンとは20年、30年という長期の返済が続きますから、その間に何が起きても不思議はありません。
しかも、今はぼくの感覚では全期間固定金利でもかなり金利は低いです。
ただ、これはあくまでぼく個人の考えです。どんな金利タイプを選んでもしくみを理解したうえで選ぶのであればいいと思っています。
こんな人は変動金利を選んじゃダメ
でも、やってはいけないのは、住宅ローンをたくさん借りるために変動や短期の固定金利を選ぶことです。
全期間固定金利では返済が苦しいので、変動金利にするといったことです。
こういう経緯で変動や短期の固定金利を選んだ場合、金利が上昇したときに家計が苦しくなったり、最悪の場合、返済できなくなってしまいます。
今は変動と固定を半々など組み合わせて借りることもできます。そんなしくみも検討しましょう。
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「変動金利を選んでおいて、金利が上がってきたら長期の固定や全期間固定に変えればいいや」と考えている方もいると思います。でも、これはそうカンタンではありません。
変動金利が上がったとき、一般的には長期の固定はそれ以上の割り合いで上がっている可能性があります。切り替えたいと思っても高すぎて切り替えられなかったということも考えられます。
また、切り替えようか迷っているうちに、金利がかなり上がってしまったということも考えられます。
その他に注意すること
共働きは注意が必要
夫婦ふたりとも正社員のような働き方をしていると、銀行はかなりの金額を貸してくれます。また、先ほど計算した目安を使ってもかなりの金額になります。
5,000万円以上の物件を頭金ゼロで買えるかもしれません。
ただ、ここは注意が必要です。
特に、これから子どもを持ちたいと考えている場合、今後も同じ仕事を続けることができるか?同じ収入を維持し続けることができるか?考えたうえで住宅ローンの金額を計算してください。
また、共働きは外食や中食(お惣菜やお弁当を買ってくる)が増えたりと生活費が多めにかかるものです。衣類や交際費も多めです。
そういう意味からも共働きの場合は、どちらかの年収を半分と考えて計算するといいでしょう。
もし、今後も働き続けられるか不安な場合は、計算に入れない方がいいと思います。
年収の安定性をみる
年収は高いけれど離職率も高いといった仕事の場合、年収の安定性を考慮する必要があります。実績連動や歩合的な仕事も同じですね。
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また、ぼくのように会社員でなく、自分で仕事をしている場合も収入の安定性を見る必要があります。過去3年間の平均やいちばん低い年の年収で考えるといった感じです。
自営業や会社経営者は銀行の審査もかなり厳しいです。頭金をたくさん貯めましょう。
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今回は「無理のない住宅ローンの限度額」についてお話しました。実際、ご相談いただくと、このように計算した限度額では家が買えないというケースがよくあります。
その場合は、この金額をたたき台に、ご家族の状況や考え方などを参考に家計の見直しをして落としどころを探ることになります。
もちろん無理がある場合は、建物プランを変更しては?物件を変更した方がいいのでは?とご提案することもあります。
以前の記事でも買いきましたが、「家は買うは一瞬、返すは一生」といいます。
ぼくは銀行で住宅ローンの審査やお客さまの対応をしてきて、悲しい事例をたくさん見てきました。家計相談でもローンの返済が大変で、暮らしていくだけで精いっぱい、貯金ができないといったお悩みを聞いてきました。
このブログを見てくださるあなたにそんな思いをしてほしくないと思って今回のシリーズを書きました。
長くなりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。これで「家を買いたい!と思ったら」シリーズを終わります。
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